YELL ~あなたへの応援歌~2026 Track♪4 『行動経済学を活用したセールススキルアップ講座⑧なぜ人は“今じゃない”と言うのか ~タイミングの心理~』

今年も変わることなく桜の咲く季節になりました。
この時季は出会いと別れの時季、実はこの私も新しい生活が始まるのです。
今年60歳、還暦を迎える私の決断、20年近く暮らし慣れ親しんだ東京を離れて、嫁さんの故郷でもある仙台に移住します。
私にとってはおよそ30年ぶりの仙台人復活、杜の都でのセカンドライフが楽しみ。
ちょうどこのコラムを発信した日は転居秒読みの日、慌ただしく過ごしてそうなのでいつもより早めに書き始めました。
そう、いみじくも今日はタイミングの話…私にはまさに今だったかな(笑)
さて、前回は「人は安心できたときに決断する」という話を書きました。
理解ではなく、納得でもなく、安心。
ここが整ったとき、人はようやく動ける。
でも現場では、こういう場面がよくあります。
「内容はいいと思います」「やった方がいいのも分かります」「でも…今じゃないかな」
出ました、「今じゃない」。これ、よく聞く言葉ですよね。
ではこの「今じゃない」って、本当にタイミングの問題なんでしょうか。
実はこれ、多くの場合、“未来に逃がしている”だけなんです。
やらない理由を、未来に置いている。
今決める必要はない。今じゃなくてもいい。もう少ししてからでも遅くない。
そうやって、判断を先送りにする。
ここで働いているのが、現在バイアス(Present Bias)
人は未来の利益より、今の安心を優先する。
たとえば健康のために運動した方がいいと分かっていても、「今日は疲れてるから明日から」
投資した方がいいと分かっていても、「もう少し勉強してから」
これ、全部同じ構造です。
でも面白いのはここから。
人は「今じゃない」と言いながら、“今ならやる”瞬間も持っているということ。
例えば、今日までのキャンペーンとか、この条件は今だけとか、このタイミングを逃すと変わるとか、こういうとき、人は動く。
つまり人はタイミングがないから動かないのではなく、“動く理由が今にない”だけなんです。
だからセールスで必要なのは、急かすことでも、煽ることでもない。
“今決める意味”を一緒に整理すること。
たとえばこんな視点。「今やると、何が軽くなりますか?」「先送りにすると、何が残りますか?」「今じゃない理由って、何ですか?」
この問いを投げると、相手の中で“今”と“未来”の比較が始まる。
ここで初めて、時間が意思決定の軸になる。
大事なのは、「急がせる」ではなく「時間の解像度を上げる」こと。
ぼんやりしていた未来が、少し具体になる。
その瞬間、人は動けるようになる。
そしてもうひとつ。
タイミングって、実は“外にあるもの”じゃなくて、“内側で作られるもの”なんです。
状況が整ったから決めるんじゃない。
自分の中で、腹落ちした瞬間に“今”になる。
だからセールスは、ベストなタイミングを待つ仕事じゃない。
相手の中にある“今”を見つける仕事。
行動経済学×セールス。
判断の歪みを知り、止まる理由を理解し、決断の条件を整え、
そして今、「なぜ動かないのか」ではなく、「いつ動くのか」ここまで来ました。
次はもう一歩先。
人はなぜ、やらないことで大切なものを失ってしまうのか。
“見えない損失”の話です。
~つづく~


